2017.8.29 Howto

楽しみながらアート鑑賞力がつく「3つの方法」とは?

絵画の見方

公募展の審査員評価はバラバラ

 
いくつかの公募展の審査員をしました。

公募展には毎回、たくさんの応募があります。まず応募するアーティストは自分の作品がわかるようなファイルを作成し、それを事務局へ送付、膨大な資料を事務局がチェックします。応募規定にきちんと合っているかどうかとか、プロフィールや展覧会歴などが揃っているかなどをチェックした後、審査員がそのファイルを元に、最終審査に残るアーティストを選ぶという方法が一般的です。

さらに、最終審査では、実物作品を見ながら、点数を付けていき、高得点のアーティストが最優秀賞やグランプリになる、というプロセスを踏みます。

今回、面白い経験をしました。というのは、審査員全員が選んだ最優秀賞が別々でなおかつ、票が重なる作品が1つもなかったのです。

これはどういうことを意味するかというと、それだけ評価というものがバラバラなのだ、ということです。さらに言えば、審査の過程で、ディスカッションを重ねているうちに、どうやら審査員の中でも傾向が2つに分かれている、ということがわかってきました。

 

評価における国際派と国内派

 

それは、海外のアーティストと比較しても力量があると思って選んでいる、いわば国際派と、完全に日本国内のマーケットを視野にしていて海外での評価は関係ない、と思っている国内派です。

言うまでもありませんが、私は前者の国際派、つまり海外でも通用するかどうか、という観点で作品を選んでいました。

後者の審査員の言い分では「国際的である必要はない。伝統の技術や美学センスが高いものを選んだ」ということでした。その時質問をしてみました。国内派の選んだ作品が海外の有名アーティストの作品と酷似していたからです。その返事が驚きでした。

「山口さんは海外の作品をいっぱい見ているからそういうことを言うけれど、一般的な人はそんな外国アーティストなんて知らないし、良いものはいいんだよ」との事。

私は21世紀のこの時代に、国内市場だけを生きていくアーティストなど通用しないと思っていますし、情報のグローバル化の中で、そのアイデンティティを明確化しない作品など有り得ないと考えています。しかし同時に作品を見る目というものを養うということは難しいなあと改めて思いました。

鑑賞力を高める3つの方法

 

私は私なりに心がけている、3つの方法をお勧めしています。

①展覧会にて

まず最初に、展覧会へ行く場合は、解説文を読まないで会場をざっくり見ます。そこで気になった作品を覚えておきます。それから入口まで戻って解説書を読みながら、見ていきます。

そうすると、思いがけないその作品にまつわるエピソードを知ります。さらに、アーティストの名前を確認していくと、自分が眼を留めた作品が意外なことに巨匠だったりします。

最後に、展覧会を見終えたら友人らと一緒に「欲しかったのはどれか?」という意見交換をします。これを何度か続けていくと、友人と選ぶ作品が違うことが発見できると思います。映画や音楽と同じように、意見や好みの違いを意識出来ます。

②ギャラリー巡りにて

2つめは、1ヶ月でも半年でも、期間を区切り、自分にも手が届きそうな作品の価格を設定してギャラリー巡りをします。

例えば3万円でも10万円でも30万円でもいいのです。その金額の中で購入可能な作品をメモしていきます。もちろん少しでも欲しいなあ、と思ったものをメモします。購入する気が全くなくても、仮定としてそう考えるだけでも作品の見方、見え方は全く違ってきます。

オフィスや自宅に飾ることを考えたりすればなおさらに、いろいろなことに気づくでしょう。例えば、作品のサイズ、さらに作品の重量、そして扱いやすいかどうか、です。そうやって見て回るうちに、強烈に欲しくなる作品との出会いがあるかもしれません。

③大規模国際展にて

3つ目は、大規模国際展に行って1日で膨大な作品の数を見る経験をすることです。

それはアートフェアでもかまいません。1日とか2日で膨大な作品を見ると、どっと疲れます。疲れますが、無意識のうちに心の中で「これは面白い。これは面白くない」と判断していることに気づかされるのです。その判断こそ、目利きの訓練なのです。

アーティスト情報を知る

 

これらの3つのことは、まさに作品との対面、対峙によっての訓練ですが、さらにインターネットや展覧会カタログを読むことによって、アーティストの情報を知るようにします。

そのアーティストがとても人気があるとか、大きな名誉の賞を受賞しているとか、そういう情報を仕入れていきます。価格という価値のバロメーターを見るために現代アートのオークションの結果などを調べることも大切です。

ちなみに、オークションの結果は、それぞれのオークション会社のウェブページにて公開されますが、その際、アーティスト名や作品タイトルではなく、オークションの順番を示すロットナンバーが掲載されるだけになりますので、予め気になるオークションがある時には、前もってオークションカタログを入手しておくことをオススメします。オークションカタログは有料の場合もありますが、多くは無料です。そうした情報は美術雑誌に掲載されていますので、そちらを参考になさってください。

さらに付け加えるとしたら、自分が好きな作品、テイストが決まってくると、徐々に、ギャラリーから送付される展覧会のDMハガキを見ただけで、見に行きたいなあ、と強く思うようになっていくことでしょう。

そして最初の一歩である作品を買うことになれば、現代アートへの次の大きな扉を開くことになるのです。

(文:山口裕美)

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